この新興住宅地も例に漏れず、どこにでもある住宅展示場の様相を見せている。このような地で円形、三角形の組合せでもって外観を特徴づける事を考えるとともに、内部は自然素材、柿渋和紙、京ジュラク、杉の丸太、シナベニヤなどを使用した。20帖の居間には大黒柱ともいえる、杉丸太を4本建てる事で杉木立を室内に作り出した。まだ、残っている大工技術を出来るかぎり生かす事、それが今回の主旨。



今回の設計は昭和47年頃の石油ショック時に、設計したものへの増築である。当時の写真を眺めても、この長居周辺はあまり変わりなく、時間がゆったりと流れている。今だ、大阪の持っている良い意味での庶民的な雰囲気をこの町並みは色濃く残している。このような町並みの中にスッポリと細長い打放しのコンクリートBOXを嵌め込んでみた。

この住宅が建っている前に疏水が流れ、路は南禅寺から銀閣寺までの思索の路。哲学の路と呼ばれているが、昼間は観光化の極限の状態の為、その呼び名の雰囲気は感じられない。しかし、夜の帳が降りる頃になると木立の間から見え隠れする、月光に照らされたシルバーの壁面はこの地の風景作りに参加するであろう。



20年前に開発された住宅地は阪神、淡路大震災により、南側の石崖に亀裂が走ったため、旧家を取り壊した。外観はこの地に多く残っている倉をイメージした。2つの倉型の屋根と鉄骨で造られた車庫上部、同じように鉄骨で造られたシンプルな門、塀。内部に入ると一転して力強い木組み見せ、構成転換を計った。

吉備路の春はレンゲ、桃、菜の花が咲き乱れ、香が風にのり、訪れる人々の感性をくすぐる。それと同時に、鬼城跡、吉備王国、秀吉の水攻めで有名な高松城、香り豊かな地酒などがこの地の歴史を物語ってくれる。これらの多様な文化蓄積にたいして半円、片流れ、せりあがりの屋根でもって地域の多様性を表現した。